片山 輝彦 鎌田 佳苗 大森 将樹
<概 要>
今回紹介する事例は、国土交通省が提唱する「i-Construction」に基づき、ICT技術の全面的活用を図るため、BIM/CIMを導入し、ボーリング成果等を基に3次元の地質データを作成したBIM/CIM活用業務の事例紹介である。
本業務では、3次元地盤モデルを作成し、以下に示す地質リスクを視覚化し、設計・施工への提言や助言を行った。
・切土部の岩級区分と標準のり面勾配
・橋梁部の基礎構造と支持層との関係
・橋脚部の崖錐堆積物の分布範囲
1.BIM/CIM活用の実施方針
要求事項(リクワイヤメント)
本業務では、要求事項(リクワイヤメント)のうち、以下の3項目を対象にモデリングを実施した。
・情報共有システムを活用した関係者間における情報連携
・後工程における活用を前提とする属性情報の付与
・施工段階におけるCIMモデルの効率的な活用方策の検討
モデル作成の着眼点
・着眼点①
地質モデルの設計上の活用用途をモデル作成エリアごとにまとめ、設計会社への有益な情報の提供を行う。
・着眼点②
各エリアに潜在している地質リスクが理解されやすいような表現を行う。
・着眼点③
3次元で可視化することにより、設計・施工での合意形成の迅速化が図れるような表現を行う。
2.モデル化の環境
使用機材:
ハード&OS:CPU:Xeon(R) 3.30GHz
メモリ:32GB
GPU:NVIDIA Quadro RTX 4000 8GB
OS:win10
ソフト:AutoCAD Cilvil3D
GEORAMA for Cilvil3D
Bentley View V8i
データ:
地表:測量業務によるLPデータ
道路線形:予備設計業務による線形
地質:本業務によるボーリング17本
3.モデル化と利活用
モデル化
図1 長大切土部の3次元地質モデル
図2 橋梁部の支持層面
図3 橋梁部の崖錐堆積物の分布
4.今後の展望
【ASPを利用した3次元モデルの更なる活用(図4)】
本業務では、「関係者間の情報連携による生産性向上の把握」を目的とし、情報共有システム(以下、ASP)を使用した。ASPとは、受発注者間など異なる組織間で情報を交換・共有するシステムである。本業務では、ASPを用いて、遠隔地の発注者・設計者との打合せ、受発注者間のスケジュール調整等を行い、業務の効率化を図った。
今後、ASPの「3次元データ等表示機能」を積極的に使用し、3次元モデルをBIM/CIMモデルの情報連携ツールや協議時の合意形成ツールとして活用していくことが望まれる。
【プレゼンテーションや汎用性の更なる発展】
利活用において、3次元モデルをパソコン上で回転させることが重要であり、作成したモデルデータを汎用的に操作できる環境が必要である。今回は、オリジナルはdwgであったが、DWFと3DPDFを活用した。今後、軽快かつインストール不要なビュアーが望まれる。
利活用
【長大切土部(図1)】
3地点のボーリングデータと現地踏査結果を基に、設計、施工時に地質リスクが懸念される長大切土部の3次元地質モデル(サーフェイスモデル)を作成し、以下の提案をおこなった。
◆のり面勾配の提案
◆のり面対策工の提案
◆掘削土量の算定
【橋梁部の基礎構造と支持層との関係(図2)】
橋梁基礎部にN値が低下する風化層が確認されているため、橋梁部の基礎構造と支持層との関係を明らかにするために3次元地質モデル(サーフェイスモデル)を作成し、以下の提案をおこなった。
◆支持層深度の設定
【橋脚部の崖錐堆積物の分布範囲(図3)】
崖錐堆積物の分布深度・範囲により、橋脚位置や施工方法の変更や基礎掘削時の斜面安定対策の検討が想定されるため、3次元地質モデル(サーフェイスモデル)を作成し、以下の提案をおこなった。
◆橋脚部の崖錐堆積物の分布範囲
【成果品の作成、プレゼンテーションでの工夫】
①サーフェイスの表現のコンタ表示から、オブジェクトとして3Dポリラインを作成し、透過表示のできないツールでも確認できるようにした。
②サーフェイスの表現のコンタ表示から、オブジェクトとして3Dポリラインを作成し、透過表示のできないツールでも確認できるようにした。汎用的に3次元モデルを操作できるように、3DPDFでの納品を実施した。これは、スペックの低いノートパソコンでも軽快に動作するため、業務検査時のプレゼンテーションに有効活用できた。
③CADのウォークスルー機能を用いて、土工部や橋梁基礎部のアニメーションを作成した。周囲を歩いているような現実感のあるアニメーションでの表現方法は、プレゼンテーションで効果的であった。
図4 ASPの地図機能を利用した情報共有
(熊出没地点の共有)