Geo-Graphiaを用いた地下水問題へのアプローチ
<概 要>
地層科学研究所では、地下情報の3次元統合可視化ソフトウェアGeo-Graphia(ジオ・グラフィア)を用いて、既存のデータから3次元地質構造モデルを構築するだけでなく、そのモデルを数値解析モデルとして活用しています。Geo-Graphiaは、各種データ(図面・地形・地質・解析・計測)を取り扱う機能を備え、それらを一元管理し、機能間での連携を可能にしています。地質技術者と解析技術者、現場管理者間の共通ツールとして、現場の意思決定を支援します。
今回は、トンネル建設における地下水問題へのアプローチ例を紹介します。施工情報・データが追加された場合は、随時、3次元地質構造・数値解析モデルをリバイスしながら、実現象との再現性・精度の向上を図っています。
1.トンネル建設を想定したワークフロー
建設施工が始まると、実測データが蓄積されていきます。場合によっては、予測湧水量との乖離が生じる可能性が出てきます
この乖離を埋めるために、地質・解析モデルをリバイスし、再度、数値解析を実施して、予測に対する信頼性向上に繋げます
ワークフロー概要
2.3次元地質構造モデル
■データ収集
・事前調査データ
ボーリング、地質平面図・縦断図
・公開資料
日本シームレス地質図、基盤地図情報サイト
(公開資料はGeo-Graphia/GIS機能より取得可)
■地質解析
・ボーリングデータや面データなどを用いて推定
・ボーリングは水平や斜めにも対応
・地質モデルだけでなく、ルジオンや岩級モデルも作成可能
入力データと地質解析モデルを同時表示可能!
■モデルの更新施工中の実測データでリバイス
・実測データが増えた場合は、3次元地質構造モデルをリバイス
・施工中、突発湧水が生じた場合における亀裂帯のモデル化
モデル更新により予測に対する信頼性向上
3.仮想ドレーンモデルを用いた地下水流動解析
■仮想ドレーンモデル
従来、浸透流解析によってトンネル湧水の解析を実施する場合は、トンネル形状に忠実なメッシュを構成する必要があり、多くの時間と労力を要しました。この課題に対し、式(1)を用いることでトンネル部をメッシュレスとしても排水効果が求められる“仮想ドレーンモデル”と称する手法を考案しました。
■地質モデルに基づいた解析メッシュの作成
事前モデルによる透水係数の最適化を実施(右図)。施工中に明らかとなった高透水帯①②をリバイスした地質モデルから再構築し、解析メッシュに反映(リバイスモデル)します。
■湧水対策工法の比較
高透水帯通過時に坑内湧水量が急増を示し、事前モデルケースよりも高い状態で推移していたため、特に上昇量の大きかった高透水帯①に対して湧水対策を実施しました。
“仮想ドレーンモデル”の排水式を式(2)から(3)へと変形することで、グラウトの透水係数を入力可能とし(湧水対策①)。また、先行ボーリングによる水抜き工を考慮した(湧水対策②)結果、湧水対策①②ともに無対策時よりも坑内湧水量が低下しました。
参考文献 ※下記以外にも情報化施工に関連した論文があります
1)仮想ドレーンモデルによる3次元浸透流解析,公益社団法人日本地下水学会 2016 年秋季講演会,2016.10 2)仮想トンネルモデルによる3次元浸透流解析,第14回岩の力学国内シンポジウム, 2017年1月 講演番号0120 3)仮想ドレーンモデルのトンネル情報化施工への取り組み,第52回地盤工学研究発表会,0692,E-07,2017年7月 4)トンネル施工時の湧水対策効果に対する早期予測解析手法の提案,第53回地盤工学研究発表会,0800,G-07,2018年7月 5)トンネル工事における3次元可視化システムの適用,土木学会第72回年次学術講演会,VI-797,H29(2017)年9月