設計業務における地質情報の3次元化
<概 要>
本報告は、実際の設計業務等における3次元での地質情報表示の事例を紹介するものである。道路構造物設計においてはCIM活用業務が増え、打合せ等における3次元モデルによるプレゼンテーションの機会も多くなっている。
道路構造物や造成事業等の面整備に必要な地質情報を得るための地質調査では、地質モデルを設計業務で使われるCADソフトで作成することが求められる。今回は代表的な設計用CADソフトである、V-nas Clair及びAUTOCAD Civil3Dを用いた地質情報の3次元化を行った。
1.橋梁設計業務における地質情報の3次元化事例(使用ソフト:V-nas Clair)
対象構造物:橋梁(橋長351m、5径間)
地質情報:調査ボーリング15箇所
ボーリングコアの見直し(複数年次の調査資料)
地質・土質区分、物性値や工学的特性に基づく再区分
☆3次元化以前の問題として、地質情報を正しく読み取り、評価することが信頼性の高いモデルを作成する上での基礎的条件となる。
※CAD上では任意の位置から眺めることが可能
3次元の設計図面へ地質情報を記載
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杭の根入れ長さ、杭径、掘削工法等の検討
☆あえて、横断方向の断面を示さず、柱状図表示のみの程度でとどめておくと、調査の精度も見えやすくなる(横断方向のデータが少ない、等)
☆これを3次元地質モデル化すると、モデルがひとり歩きすることが懸念される。
⇒構造物詳細設計のための地質モデルの3次元化は、十分な精度が担保できるだけの情報量を得た段階で行うべき?
2.面整備事業における地質情報の3次元化事例(使用ソフト:AUTO CAD Civil3D)
・対象範囲(約1.5km×3.9km)、標高10~50mの台地(丘陵地)
・調査ボーリング 89箇所
・調査ボーリング実施地点を結ぶ形で地質断面図を作成。
☆この時点で既にボーリング実施密度にばらつきがあり、精度の良い部分と想定に頼る部分ができてしまう。
⇒地形情報、既存の地質図、現地踏査等からいかに妄想を働かせるか、技術者の技量が問われる部分。
☆ただし、2次元の断面図であれば、柱状図の密度から、細かくわかっているところとそうでないところが見た目で判断できる。
・作成した地質断面図を基に3次元モデルを作成。
☆断面図間の補完作業により、地質技術者の技量の差、解釈の違いにより「不確かさ」「地点による精度の違い」はさらに増大する。
☆一方、その不確かさが見た目分かりにくくなる(調査不足箇所、不足する情報が見えにくい)。
・3次元モデルから任意の地質断面図を作成。
☆ここまでくると、ある地点における「確かさ」「不確かさ」は全くみえなくなる。
3.実務における成果と今後の課題
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道路構造物の設計等、大縮尺(1:100~1:1000)における地質情報の3次元化は、設計に必要な地盤情報を与えることのできる確かさを担保する必要がある。そのためには、3次元化を前提とした調査ボーリングの位置の選定、本数の確保が必須。
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ある程度の広がりを持つ面整備事業においては、3次元モデルを作成した後、任意の断面を作成し、造成計画等に活かすことになるが、任意の地質断面がどの程度の精度を持つものなのか、評価することは困難である。
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地質情報が持つ「あいまいさ」「不確かさ」を示すことも必要。(従来の地質縦断図では破線で示す等、ある程度ぼかすことが可能であるが、これを3次元でどう示すか)。
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設計対象によって、求められる精度も異なる。構造物詳細設計における杭長さの決定と造成事業における土工区分に必要な地質情報とその精度は各々異なる。
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地質技術者としては従来の地質図作成における「妄想」を3次元で表現できる技量を身に着けることも必要である。