10. モデリング
10.2 地質対比
Point.2 地質対比の基本と留意点について知る
地質対比とは、3次元地質・地盤モデルを作成するために、地質調査データの同じ条件(同一時代、同じ地質種・地質体、類似物性値等)の境界を判別し、境界データとしてグルーピングする作業です。
図10.2-1 地質対比が完了した状態(引用:1)
■地質対比の基準
地質対比の基準となる地質情報には次のようなものがあります。
◆微地形情報
・微地形分類図
・DEMデータの地形解析図による地形変換線
◆地質模式地および地質図
・既往地質文献資料
・地質図幅、各種地盤図
・既存調査における地質平面図・断面図
◆基準ボーリング
・示準ボーリング柱状図
・オールコアボーリング柱状図
地質層序やグルーピングの考え方が地質調査の進展で変わる場合は、地質対比もそれに合わせて修正します。また、同じカテゴリ・グループの地質境界面でも、形成プロセスが局部的に変われば、異なる地質境界面の集合体となります。その場合、地質対比もそのような形成プロセスに応じたものにしなければなりません。
■地質対比の視点
地質対比に際しては次のような視点を持つ必要があります。
【視点1】
地質境界面は自然現象であることを念頭に、下記①~③の視点で物理的・地質学的にどのように形成されたのかを考えて対比します(図10.2-2)。
①層序学・地質構造学的に同じ地質カテゴリ(部層・累層など)やグループの境界を判別する
②境界の新旧関係を判定する
③境界面の形成プロセスを考慮する
【視点2】
どのような形状にサーフェスモデルを作り、どのような順番でサーフェスモデル同士が切り合えば、地層モデルができるのかを組み立てます。あらかじめ地質層序の模式図を作り、地質境界面の位相的関係を明らかにしておくことが大切です(図10.2-3)。
【視点3】
サーフェスモデル同士が交差し互いに切り合うと、その結果としてどのような形状が生みだされるかを組み立てます(図10.2-4)。境界面モデルの形状を様々な手段で観察・チェックし、不自然さをつぶしていきます。
図10.2-2 侵食・堆積の解釈の違いにより異なる対比の例(引用:1)
図10.2-3 イベント・グループを考慮した対比の例(引用:1)
自然な地質境界面を再現するために、地層の形成プロセスや地質形成時代を考慮する
図10.2-4 切り合い順番を考えた対比の例(引用:1)
堆積性の地質が主体の場合、ボーリングの上位(浅い部分)から地層を対比する
■地質対比の方法
地質対比作業では地質調査データを同一空間に重ね合わせることで総合的に判定する必要があります。従って、地質調査データは、地質図、地質断面図、示準ボーリング、ボーリングの試験情報(原位置試験、検層、室内試験結果)、物理探査結果等を、3次元配置(あるいは2次元配置)して地質対比の判断材料とします。
地質対比の作業中に地質情報に疑義が生じ判断に迷う場合は、原本に遡り地質情報を再評価する必要があります。原本とは、柱状図であればボーリングコア、地質図であればルートマップであり、疑わしければ対比に用いたデータの修正や棄却をおこないます。その際は、修正や棄却の理由を記録する必要があります。
なお、地質対比方法のルールは、後の更新作業に配慮し、記録する必要があります。